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「神奈川県獣医師会学術症例報告会」で発表しました!!

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「神奈川県獣医師会学術症例報告会」で発表しました!! /2007年2月06日号

  • 2006年3月1日 神奈川県獣医師会学術症例報告会
  • マーブル動物病院からの演題
  • 1.猫の除爪術に関する一考察
  • 難波信一1) 大沼和気子1) 小笠原静香1) 桑原岳1) 伊藤典子1) 尾上翠1) 荒瀬由梨恵1)
  • 2.特発性咀嚼筋炎が先行した犬歯肉扁平上皮癌の一例
  • 大沼和気子1)、小笠原静香1)、伊藤典子1)、桑原岳1)、尾上翠1)、荒瀬由梨恵1)、難波 信一1)
  • 3.腹部大腿動脈血栓塞栓症および上腕動脈血栓塞栓症が疑われた2例
  • 小笠原静香1) 大沼和気子1) 桑原岳1) 伊藤典子1) 尾上翠1) 荒瀬由梨恵1) 難波信一1)
  • 4. 椎間板突出のイヌと肝腎の石灰化についての考察
  • 桑原岳1)大沼和気子1) 小笠原静香1) 伊藤典子1) 尾上翠 1) 荒瀬由梨恵 1) 難波信一1)
  • 5.ピロキシカムに反応した前立腺移行上皮癌の一例
  • 伊藤典子1) 大沼和気子1) 小笠原静香1) 桑原岳1) 尾上翠1) 荒瀬由梨恵1) 難波信一1)
  • 6.内側関節上腕靱帯損傷による前肢破行を呈した症例
  • 尾上翠1) 大沼和気子1) 小笠原静香1) 桑原岳1) 伊藤典子1) 荒瀬由梨恵1) 難波信一1)
  • 7.消化管に発生した腺癌によって異なる臨床症状を示した猫二例
  • 荒瀬由梨恵1) 大沼和気子1) 小笠原静香1) 伊藤典子1) 桑原岳1) 尾上翠1) 難波信一1)

  • 猫の除爪術に関する一考察
  • 難波信一1) 大沼和気子1) 小笠原静香1) 桑原岳1) 伊藤典子1) 尾上翠1) 荒瀬由梨恵1)
    1)マーブル動物病院・神奈川県藤沢市
  • I.はじめに
  • 猫の除爪術は、その是非について論議の耐えない外科手術であり、欧米では不妊手術や去勢手術と同時に行われるのが一般的であるが、日本では比較的依頼が少ない手術である。除爪術は、術後疼痛と爪の再生という大きな問題を抱えており、この点を改善するように手術手技と鎮痛法が変化してきたというのが実情である。これらを踏まえ、演者らは1993年から2007年の間に当院で行った除爪術について、手術法の変遷とその結果に対して考察を加えたので報告する。
  • II.症例
  • 対象は、除爪術のために来院した猫46頭(平均14.1ヶ月齢、範囲6ヶ月-7歳)である。1993年から2000年までは、ネイルトリマーまたはペンチ型爪切りによる方法(n=4)、通常の手術による方法(n=11)を採用して定法どおりの術式で行った。2001年以降は炭酸ガスレーザーによる方法(n=25)を用いて、Irwinらの提唱するFour-Cut法で行った。また、ネイルトリマーまたはペンチ型爪切りにて除爪術を行い、爪が再生したとの主訴で来院した猫(n=6)については、炭酸ガスレーザーを使用して再手術を行った。炭酸ガスレーザーは、日本ルミナス社製、12LPを使用し、出力5Wの連続波モード、先端は0.8mmのセラミックチップを使用した。なお、全頭とも術前にNSAIDsのいずれかを投与して術前の先制鎮痛を行った。
  • V治療および経過
  • 1.ネイルトリマーまたはペンチ型爪切りによる方法
  • 手術時間は他の二法に比べて短時間であったが、深趾屈筋腱終止部の結節に付随する末節骨体を残してしまうため、 爪の再生頻度が最も高いと考えられた。また、通常の手術に比べて出血は少ないものの、炭酸ガスレーザーに比べれば若干多かった。疼痛に関しては、通常の手術とほぼ同等、炭酸ガスレーザーに比べると明らかに激しかった。
  • 2.通常の手術による方法
  • 手術時間は、他の二法に比べて長時間であった。深趾屈筋腱終止部の結節は、簡単に取ることが可能であったが、出血が多いこと、パッドを破損しやすいことが問題点として挙げられた。また、疼痛については三法の中でもっとも成績が悪かった。
  • 3.炭酸ガスレーザーによるFour-Cut法
  • 手術時間は、ネイルトリマーまたはペンチ型爪切りに比べて長く、通常の手術よりも短かった。末節骨にレーザーを当てながら組織を剥離するため、パッドの破損は最小限であった。出血と疼痛については、他の二法より明らかに優れていた。
  • W考察
  • 上記の三法を比較すると、どの方法にも一長一短があると言える。しかしながら、患者主体の医療という観点から考えた場合、術後疼痛と爪の再生が最も重要な問題である。2001年に導入した炭酸ガスレーザーは、上述の問題点を克服できる機器としてきわめて有効であると考えられた。ただし、手術法によっては、炭酸ガスレーザーの利点が生かしきれないことがあるため、その利点を最大限にする方法が必要である。そこで採用したのが、Irwinの提唱するFour-Cut法である。術後の疼痛も軽微であり、包帯の必要もなく、手術当日に帰宅できるという極めて優れた方法と考えられた。 日本ルミナス社製の炭酸ガスレーザーで汎用されるチップには、0.3mm、0.4mm、0.8mmがあり、先端が細いほど切開に優れ、太いほど止血に優れるとされている。しかしながら、猫の除爪術に対しては、上述のどのチップを使用しても、大きな差は認められなかった。チップの選択は、術者の好みによるところが大きいと考えられた。
  • 特発性咀嚼筋炎が先行した犬歯肉扁平上皮癌の一例
  • 大沼和気子1)、小笠原静香1)、伊藤典子1)、桑原岳1)、尾上翠1)、荒瀬由梨恵1)、難波 信一1)
    1)マーブル動物病院:神奈川県藤沢市
  • Tはじめに
  • 片側側頭筋の萎縮と開口困難を主訴に来院し、臨床症状と各種検査から特発性咀嚼筋炎と診断した患者にステロイド療法を開始したところ良好に経過していた。治療経過中、頬部に腫脹が認められ、切除バイオプシーと病理組織検査により扁平上皮癌と診断されたが、各種治療によりQOLの維持を継続することができた症例に遭遇したのでその概要を報告する。
  • II.症例
  • 症例は10歳齢、未去勢雄のジャックラッセルテリア、体重は6.95kgであった。「顔の一部がへこんでいる、口があけづらい、興奮したときにパタッと倒れてしまう」などの症状を主訴に来院した。初診時の身体検査所見では、右側側頭筋の萎縮が顕著であり、開口が困難である他に異常所見は認められなかった。一般血液検査、血液生化学検査では、犬C反応性蛋白(CRP)の上昇(4.6mg/dl)のみが認められた。腹部および胸部レントゲン検査では特に異常所見はみとめられなかった。以上の検査所見より、特発性咀嚼筋炎と診断し、オルビフロキサシン40mg/head SID PO、プレドニゾロン10mg/head SID POによる治療を開始した。
  • V経過
  • 第4病日の再診では、口の動きがほぼ正常に戻ったとのことであったが、側頭筋の萎縮に変化はみられなかった。経過が良好であったためプレドニゾロンの漸減を行い、経過を観察していたが、第9病日より食欲の減退がみられ、再度来院した。このとき反対側の側頭筋も若干の萎縮が認められた。プレドニゾロンの漸減による咀嚼筋炎の悪化を考慮し、初期投与量に戻したところ、再び良好な経過を示した。その後、飼主の希望もあり、再度プレドニゾロンを減量するとともにシクロスポリンの併用療法を開始した第56病日頃より、右頬部の腫脹がみられ、歯石の付着も重度であったことから、全身麻酔下での口腔内検査ならびに処置を実施した。口腔内および頭部CT検査では、第4前臼歯から第2後臼歯にかけて歯肉全体が腫脹し、周囲の骨の融解もみられたため、病変部位の組織生検を実施した。病理組織学的検査の結果、扁平上皮癌と診断された。治療は、外科的な切除は実施せず、咀嚼筋炎の治療に加え、ピロキシカム0.3mg/kg SID PO、ミソプロストール6ug/kg BID POの投与を追加した。その後、飼主からの電話連絡により経過を把握していたが、口腔内からの出血や視力の喪失などがあったものの、腫脹が悪化することも無く、比較的QOLは維持できているようであった。そして、第182病日に死亡した。直接的な死因は不明だが、飼主からの経過報告から考えると扁平上皮癌の進行・転移の可能性が疑われる。
  • W考察
  • 咀嚼筋炎の病因は、はっきりと解明されていないが、この疾患に罹患した犬はコルチコステロイドの免疫抑制量の投与に反応すること、血清中に2M筋線維に対する自己抗体が80%の症例で検出されることから、侵された筋肉の炎症浸潤が原因となって起こる病気で免疫介在性のメカニズムが関与していると考えられている。診断は臨床症状をもとに診断される。急性例では側頭筋、咀嚼筋に疼痛を伴う腫脹、発熱、下顎、肩前リンパ節の腫脹、扁桃腺炎などがみられ、また血液検査上でも軽度貧血、好中球増多症、血清クレアチニンキナーゼ・ALT・グロブリン濃度の上昇などがみられる。しかしながら、慢性例では側頭筋・咀嚼筋の萎縮と開口が困難である以外は特異的な所見がみられない場合が多い。また、筋肉の組織診断と免疫組織学的検査による自己免疫抗体の検出が診断補助になることがある。一方、扁平上皮癌は犬と猫で最もよくみられる悪性の口腔内腫瘍であり、犬では悪性の口腔内腫瘍の約20~30%を占める。症状としては腫瘍の浸潤による歯肉の腫脹、歯周組織の破壊、歯の緩みなどがみられ、増殖性・潰瘍性の病変で出血や二次感染を伴う。転移率は低いといわれており、外科的な完全切除や、放射線療法により良好な経過を示す場合もある。本症例では、臨床症状から咀嚼筋炎と診断し、治療により良好な経過を得たが、飼い主の希望により腫瘍に対する積極的な治療を断念せざるを得なかった。また、罹患筋の組織学的検査、自己抗体の検出などの積極的な検査を実施しなかったため、咀嚼筋炎と歯肉の扁平上皮癌の関連性は不明であるが、免疫抑制療法により比較的良好なQOLを維持できたのではないかと考えられる。
  • 腹部大腿動脈血栓塞栓症および上腕動脈血栓塞栓症が疑われた2例
  • 小笠原静香1) 大沼和気子1) 桑原岳1) 伊藤典子1) 尾上翠1) 荒瀬由梨恵1) 難波信一1) 
    1)マーブル動物病院・神奈川県藤沢市
  • はじめに
  • 全身性動脈血栓症(STE)は起立不能、疼痛、股動脈脈拍の触知不可、パッドのチアノーゼなどを伴う急性疾患である。心疾患を持った猫に多く発生し、その60%は肥大型心筋症、25%は分類不明の心筋症を併発していると言われている。大部分の猫では大動脈三分岐部に血栓が塞栓するが、片側の大腿動脈や上腕動脈、腎動脈などに発症することもある。血栓が溶解する機序は実に多様性に富んでおり、最疎通が起こるかどうかは、塞栓血栓の大きさや生体の溶解能力および治療の成功に依存する。回復率は報告によって様々だが、0%から39%と低く、平均生存期間は51日から184日である。 治療成績はヘパリンやアスピリンを用いた対症療法で50%、組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)による治療では43%が回復したと報告されている。今回、両後肢の不全麻痺を主訴に来院し、血栓塞栓症と診断し治療した1例、および前肢の跛行を主訴に来院し上腕動脈の血栓塞栓症として診断、治療した計2例に対して、従来から行われているヘパリンをはじめとした薬物療法に加えて、温熱療法を併用した場合に良好な結果が得られたので報告する。
  • 症例1
  • 10歳齢、雑種、去勢雄の猫で、2000年に当院で肥大型心筋症と診断されていた。突然うなり声を上げてのた打ち回っているという主訴で来院。両側の後肢には冷感があり、パッドはチアノーゼを呈し不全麻痺を起こしていた。エコーにて左心室壁の顕著な肥厚、著しく拡張した左心房内には「スモーク」と呼ばれる、うっ滞した血液の乱流像が確認された。肥大型心筋症による血栓塞栓症と診断し、ヘパリンによる治療を開始した。食欲が安定し、症状が安定したためアスピリンによる内服治療へと変更した。不全麻痺は1ヶ月以上持続したが、温熱療法により後肢の反射が回復し、現在は日常生活に支障なく良好に経過している。
  • 症例2
  • 1歳齢、雑種、雄の猫。突然右前肢を跛行しているという主訴で来院。右前肢はパッドのチアノーゼ、反射消失が認められ、上腕動脈の血栓塞栓症と診断、治療を開始した。一度内服治療に変更したところ、前肢の浮腫と熱感があったため、ヘパリンと温熱治療を開始したところ症状は落ち着いた。その後パッドの変色、掌底部の脱毛、爪の脱落が発生しては改善を繰り返したが、最終的に再生しなかった2本の爪は、感染と疼痛を繰り返したため、炭酸ガスレーザーによる末節骨基部からの除爪術を行い、現在は良好に経過している。なお、温熱療法は近赤外線照射装置(スーパーライザーR 東京医研)を出力70% 3秒照射1秒休止のサイクルで3分間とし、1週間に1度とした。
  • 考察
  • 猫のSTE治療に関しては、現在、t-PAによる治療成績が最も良いとされている。しかしながら、薬剤が極めて高価なうえに再還流障害などの可能性を秘めており、第一選択として飼主に提示するには、解決すべき問題点が残されていると考えられる。t-PA以外の根本的治療としては、外科とバルーンカテーテルによる塞栓除去術がある。だがこれらの方法は、全身麻酔が必要となるため、STEを発症し後負荷の上昇により心疾患が悪化している猫にとっては、危険性が高い。また、再還流障害の危険性があるため、入院による定期的なモニタリングや予防処置が必要である。今回報告した2例では、t-PAを使用せず、従来から行われているヘパリン療法に、補助療法として温熱療法を使用したに過ぎないが、現在も良好に経過しており、明確な血栓症の再発は認められていない。価格、麻酔や再還流障害などによる突然死の危険性から、飼い主が根本的治療を選択しなかった場合でも、良好な予後が得られる可能性があることについて、今後も検討を重ねていきたいと考えている。現在、我々は、t-PAと温熱療法を併用した場合の成績について、従来から行われている方法ならびに報告されている方法との比較を検討している。
  • 椎間板突出のイヌと肝腎の石灰化についての考察
  • 桑原岳1)大沼和気子1) 小笠原静香1) 伊藤典子1) 尾上翠 1) 荒瀬由梨恵 1) 難波信一1)
    1)マーブル動物病院・神奈川県藤沢市
  • 1.はじめに
  • 椎間板突出は脊髄圧迫の機序からHansen1型、2型に分類されているが、特にHansen1型椎間板突出は3歳齢以上の軟骨異栄養種、軟骨低形成種のイヌで頻発する。ダックスフンド、ペキニーズ、ウェルシュ・コーギー、ビーグル、ラサ・アプソ、ミニチュア・プードルなどが代表例である。軟骨化生し硬化した椎間板物質が、線維輪を破って脊柱管内に脱出し脊髄を圧迫する。罹患犬は圧迫を受けた脊髄分節以降の運動神経や感覚神経に関連した症状を呈する。当院でCTスキャンを用いて椎間板突出の症例の診断を行った際に、椎間板突出を起こしているほとんどの症例で胆管内結石、腎臓への石灰沈着がみられた。そこで肝臓、腎臓への石灰沈着機序と椎間板の変性、石灰化機序との関連性について2005年から2007年の間に来院した症例のデータをもとに検討した。
  • 2.データ検討
  • 当院でCTスキャンにより椎間板突出と診断した34例の内訳は以下の通りであった。ミニチュア・ダックスフンド25例、ミニチュア・シュナウザー3例、シーズー2例、ウェルシュ・コーギー、トイ・プードル、ヨークシャ・テリア、ビーグルは各1例であった。うち26例で胆管内結石、腎結石、腎臓の石灰沈着、膀胱内結石がみられた。事前に行った身体検査、血液生化学検査ではいずれの症例に関しても該当臓器についての異常はみられなかった。なおCTスキャンで画像化した椎間板はCT値から、軟骨化や石灰化が生じていると推測される。念のために行った脊柱管内に突出した椎間板物質の組織学的検査(11例)では、程度の差はあったが全て石灰化および石灰沈着がみられた。
  • 3.考察
  • 病理学的には、軟部組織の石灰化は組織の炎症や変性に続発する異栄養性の二次的変化、または代謝異常による高カルシウム血症が原因とされている。しかし今回検討を行った症例については血液学的、臨床的に該当臓器には異常がないこと、また、血漿中のカルシウム濃度についても異常が見られないことから、肝臓、腎臓の結石形成、石灰沈着については遺伝的もしくは体質的な要因が関与していることを示唆している。 椎間板物質の変性・石灰化について、実験的な脊柱への負荷により髄核の変性を示唆する所見がみられた報告や、軟骨化生した椎間板物質に発現したRunx2のmRNAを定量した報告、軟骨異栄養犬種における軟骨内骨化には繊維芽細胞増殖因子受容体の1種であるFGFR3の点突然変異は関与しないという報告など、物理的な要因に加えて、遺伝的な要因もしくは犬種特有の体質的な要因の関与が証明されつつある。本研究で明らかになった椎間板突出を起こすイヌに特徴的な肝臓、腎臓の結石形成、石灰化所見について、今後、椎間板物質の石灰化機序との因果関係について分子生物学的な立場から究明する必要がある。
  • 内側関節上腕靱帯損傷による前肢破行を呈した症例
  • 尾上翠1) 大沼和気子1) 小笠原静香1) 桑原岳1) 伊藤典子1) 荒瀬由梨恵1) 難波信一1)
    1)マーブル動物病院・神奈川県藤沢市
  • T.はじめに
  • 犬の肩関節の不安定性に関する報告は非常に少ない。その理由として、肩関節は構造上、周囲軟部組織による安定性が高く、従来の診断方法では十分な診断結果が得られないためと考えられる。特に、レントゲン検査は軟部組織の描出が困難なことから関節内の腱・靱帯の状態や軟骨に対する情報を得られないため、肩関節に対する診断精度が低い。今回、内側関節上腕靱帯損傷による跛行を呈した症例に遭遇したのでその概要を報告する。
  • U.症例
  • 雌のトイ・プードル、6ヶ月齢、体重2.75s、混合ワクチンによる予防は受けていた。高さ約60pのソファーより飛び降りた後、キャンキャン鳴き左前肢を挙げたままという事で来院した。身体検査より、脱臼および骨折が認められなかったため経過観察とした。2日後、前夜姉妹犬と遊んでいたときに同側肢を痛め、朝は少し肢を着いていたが、全く着かなくなったとの事で再来院。撓骨骨幹部に圧痛が認められるが、動揺はなく骨折および脱臼はないとし、初診時と同様に経過観察とした。主訴は、跛行の改善が見られないとの事。来院時、患肢は正常肢と比較して外側に開いているように観察された。2方向からのレントゲン検査を行ったが、上腕骨および肩甲骨の骨折や軟骨の損傷など異常所見は確認できなかった。歩行時には、前肢の外転を伴った非負重性の跛行が認められた。触診では、上腕骨頭の内側への変位および、外転検査において過度の角度が確認された。肩関節の屈曲および伸展時に疼痛が見られた。歩行様式より肩関節の不安定性が疑われ、触診から内側関節上腕靱帯損傷と診断した。
  • V.経過
  • 内側関節上腕靱帯および周囲軟部の回復・安定化を図るため、7週間のケージレストによる経過観察を行い現在、良好に回復中である。 疼痛管理として、カルプロフェン 3mg/kg sid po (リマダイルR ファイザー)とミソプロストール 4ug/kg bid po(サイトテックR ファイザー)の内服を8日間行った。
  • W.考察
  • 前肢跛行の原因には、肩関節の異常、肘関節の異常またそれよりも先の手根関節やパットの異常などがあげられる。まれに、腕神経叢の腫瘍、神経学的疾患が考えられる。今回の症例では、跛行のほかに、前肢の外転、伸展・屈曲時の疼痛、外転試験により過度の角度を示した。初診時においては、肩関節の異常は疑っておらず単純な跛行として治療を行ったが、度重なる外傷により状態が悪化したことで確定診断に至った。肩関節周囲の異常による前肢跛行の診断は、臨床症状から診断を確定することが非常に難しい。その理由として、肩関節内の問題のみならず周囲組織の異常が伴っている可能性が高いためである。診断において、十分な身体検査・レントゲン検査を行い、可能であれば、関節鏡を用いて靱帯・腱を直接目視することが望ましいと考える。レントゲン検査においては、肩関節に負荷をかけての撮影を行うことで、肩関節周囲の軟部組織の異常を診断する際有用となると考える。
  • 消化管に発生した腺癌によって異なる臨床症状を示した猫二例
  • 荒瀬由梨恵1) 大沼和気子1) 小笠原静香1) 伊藤典子1) 桑原岳1) 尾上翠1) 難波信一1)
    1)マーブル動物病院・神奈川県藤沢市
  • T.はじめに
  • 腺癌は、猫の消化管に発生する腫瘍のうち、リンパ腫に次いで多いとされている。臨床症状は、嘔吐、食欲不振、体重減少、沈うつ、メレナなどであり、予後は要注意である。今回、同時期に来院し、消化管に発生した腺癌によって全く異なった臨床症状を示した二例について、その概要を報告する。
  • U.症例
  • (1)症例は、雑種猫、13歳齢、去勢雄、9.00s。混合ワクチンは1年半前に接種。軟便を主訴に来院した。便検査にて潜血反応あり。初診時の血液学検査では軽度貧血(PCV24%)があったが、血液生化学検査では特に目立った異常は見当たらず、腹部および胸部レントゲン検査でも特に異常所見は認められなかった。猫免疫不全症ならびに猫ウイルス性白血病検査はともに陰性。便の潜血反応が改善せず、一週間後貧血が進んだため(PCV16%)バリウムにて造影検査を行ったが、特に異常所見が得られなかった。その後試験開腹にて、小腸に発生していた1cm×2pの腫瘤を認めたため、小腸の部分摘出ならびに吻合を行った。病理検査にて腺癌と診断された。
  • (2)症例は、雑種猫、13例歳齢、去勢雄、5.94s。近年の混合ワクチン接種歴はなし。慢性的な嘔吐と体重減少を主訴に来院した。初診時の血液学検査では異常なし。血液生化学検査ではBUN(31mg/dl)、CRE(2.5mg/dl)の軽度上昇が認められた。猫免疫不全症検査は陽性。嘔吐に対して対症療法を施すも、良化が認められなかったため、バリウムにて造影検査を実施。バリウムの胃からの排出遅延と、一旦小腸に流出したバリウムの胃への逆流を認めた為、内視鏡検査と試験開腹術を行い、小腸を絞扼するように発生した腫瘤を認めたため、小腸の部分摘出ならびに吻合を行った。小腸の腫瘤は病理検査にて腺癌と診断された。
  • V.経過
  • (1)術後の経過は比較的良好であり、一時14%まで低下したPCVは10日後には24%まで上昇。便の潜血反応も消失した。現在はアドリアマイシン30mg/m2 ivの3週間ごとの投与を行い、経過は良好である。
  • (2)術後の経過は良好であり、嘔吐は消失し一時4.10kgまで減少した体重は、術後3週間で5.30kgまで増加。現在はアドリアマイシン30mg/m2 ivの3週間毎の投与を行い、経過は良好である。
  • W.考察
  • 今回、(1)の症例が示した臨床症状はメレナと体重減少であり、嘔吐はほとんど認められなかった。逆に(2)の症例の症状は嘔吐と体重減少であり、下痢と消化管出血は認められなかった。このように異なった臨床症状は、結果としてともに消化管に発生した腺癌によって引き起こされており、摘出手術によって症状は改善された。このように同じ病因から全く異なる臨床症状が起こる事も大いに考えられ、検査を重ねても症状の原因が特定できない場合、試験開腹術の実施を考慮する事が重要であると考える。

マーブル動物病院院長
難波 信一

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